移動手段の確保が課題となっている地域に対し、新たな解決策としてライドシェアサービスが注目を集めています。スマートフォンのアプリを使って個人の運転手を手配できるこのシステムは、高齢者や学生、観光客などの移動の利便性を大幅に向上させる可能性を秘めています。
しかし一方で、違法な白タク営業との線引きや、運転手の資格要件、事故時の補償対応など、様々な課題も指摘されてきました。
そこで国は2023年、ライドシェアの安全基準などについてガイドラインを定め、一定の要件を満たせば地方自治体がサービス導入を認める方針を打ち出しました。
こうした中、2024年に入り全国の自治体でライドシェアサービスの動きが活発になってきました。特に注目されているのが、地元のタクシー事業者がライドシェア事業の主体となって参入している事例です。
長年にわたり地域交通を支えてきたタクシー業界にとって、ライドシェアの台頭は影響が避けられない潮流です。しかし、単に敵対するのではなく、自らが主体となってライドシェア事業に参入することで、課題解決と新たなビジネスチャンスの獲得を両立させようという動きが出てきました。
実際に、タクシー会社がライドシェア事業に参入している自治体がいくつか存在します。タクシー会社ならではの強みを活かしつつ、ライドシェアの利点も取り入れた、新しいタイプの移動サービスを展開しているのです。
例えば、運転手の確保や適切な教育が容易にできること、事故時の補償体制が既にあること、効率的な配車システムを持っていることなどがタクシー会社のメリットと言えます。こうした基盤を活かしながら、ライドシェアの低料金と利便性の高さも実現できるサービスになっています。
また、地域に根ざした事業者ならではの工夫も施されています。地元雇用の創出や、高齢者の買い物支援、観光とのタイアップなど、地域性を活かした付加価値サービスを組み合わせる動きもあります。
このように、タクシー事業者がライドシェアに主体的に参入することで、両者の長所を組み合わせた新しい移動サービスが誕生しつつあります。
以下に、2024年にタクシー会社主体の日本版ライドシェアを開始した自治体の名称とその開始時期を一覧で示します。
自治体名 開始時期
東京都23区など 4月
神奈川県一部地域 4月
愛知県一部地域 4月
京都府一部地域 4月
長野県一部地域 4月
北海道札幌市 5月以降
大阪府大阪市 5月以降
福岡県福岡市 5月以降
日本版ライドシェアは制度的に色々問題点を抱えながらも、徐々に拡大してきています。
今後の成り行きに注目してゆきたいところです。